エコロジック代表からのメッセージ
MESSAGE FROM MASA SHINTANI
 

ev-problem1,人生を変えた出会い

1992年、ブラジル・リオデジャネイロで開催された地球サミットにおいて、持続可能な社会環境を実現するための取り組みとして、当時はまだ一般に知られていなかった、ある環境保全活動が紹介されました。

違法伐採が進むブラジルの森林自然を守るため、それまで伐採を行っていた村人に対して観光ガイドとしての技術を教え、学んだ村人が森林自然の大切さを観光客に伝えて収入を得るという、一石二鳥の活動です。それが「エコツーリズム」でした。

その当時、私は最先端の環境学を学ぶため、環境保全の先進国であるアメリカの大学院に留学していました。
ボーイスカウトやスキューバダイビングなどを通して大自然の素晴らしさに触れていた私は、私たちの生活の「利便性」や「安心」のため、貴重な自然環境がことごとく破壊・汚染されている状況に強い疑念を抱き、自然環境と共存する方法を模索していたのです。

「エコツーリズム」は、現在では世界各地で導入されて世界的なブームになっていますが、今から20年以上も前の当時は、未だ導入事例も僅かで、国際会議で紹介されるにとどまっていました。
しかし私にとっては、まさに求めていた「答え」を見つけた、人生を変える出会いでした。

その時から「エコツーリズム」は私の人生の一部になりました。

2,真のエコツーリズムとは

私が米国の大学院で学んだ環境学は「自然を管理する」ための考え方や様々な技術でしたが、修士論文制作のためハワイでツアーガイドのインターンをしていた時、私は「真のエコツアーとは何か?」に気づく機会に恵まれました。

ハワイ島のガイドは、島で生まれ育ったハワイアンのローカルガイドと島外から来たガイドの2つのグループに大別されますが、私がローカルガイドの日本語通訳としてエコツアーに付き添うという貴重な経験を得ることができました。

彼らは、「今日、家族が必要とする以上の恵みを、海からいただいてはいけない」と教えてくれました。
その地で生まれ、ハワイの大自然の中で育ったローカルガイドたちは、自然と共生するための様々な「答え」を知っています。そしてそれは、次の世代にも引き継がれていました。
心よりその地を愛する人だからこそ、その地を訪れる人たちに地域の価値を伝え、本当の感動を与えることができるのだと知ることができました。

この時から私は、「地域」という言葉や「地域らしさ」を常に意識するようになり、自然環境の保護は地域の文化と深いつながりがあり、地域文化にこそ、持続可能な社会を構築する「答え」があると考えるようになりました。

こうして、私は「Community Based Ecotourism(地域が主体となるエコツーリズム)」を志すことになったのです。

localtour3,エコツーリズムと課題

現在、世界で広く知られている「エコツーリズム」は、地域住民が自らガイドとなり、地域の自然や彼らの文化の価値を観光客に伝えて対価を得ることで、それらを住民が持続的に守り、次世代に継承する、という考えです。

「エコツーリズム」で持続可能な地域社会の実現を目指す考え方は理想的であり魅力的ですが、しかし実現させることは非常に困難です。

それにはたくさんの要因がありますが、一つは地域住民たちの意識を変えることは大変な労力と時間がかかり、住民と支援者、共に我慢が必要だということです。そのため、世界の多くのエリアでは、地域住民が排除されたエコツーリズムが頻繁に行われています。

私たちエコロジックが行うエコツーリズム開発支援は、先ず地域住民に、その森や草木などの自然環境、そこで暮らす生活文化そのものが観光客にとって「価値」のあるものだと気付いてもらうことから始めます。その「価値」とは、もちろん材木としての価値ではありません。多様な生物を育み、人々の命を育む、その自然環境自体に価値があるということです。

私たちは地域住民に寄り添い、ゆっくりと時間をかけて信頼関係を構築し、彼らの理解、同意のもとにエコツーリズム開発支援を行うことをポリシーに、日々チャレンジしています。

japanese4,日本人だからこそ

米国の未来学者であり作家であるジョン・ネイスビッツ氏は、次のように述べています。

"One modern nation and economic superpower functions much like a tribe. The Japanese."
(近代国家であり、部族のように機能する超経済大国、それは日本人である)

"This most homogeneous of cultures has been doing extraordinarily well thniking locally and acting globally for many years."
(最も単一な文化を有する日本人が、長年、最もうまく地域的に物事を考え、世界で活躍し続けている)

まさに、個人主義ではなく、地域的に物事を考え、周辺との調和を重んじる日本人だからこそ、世界で認められていると思います。
実際に、多くの途上国の現場で、私たち日本人は地域の人々から受け入れられ、国際協力活動ができていると感じています。

アジアの村々では、私が米国で学んだ「自然を管理する」という考えはなく、「自然の一部として、自然を敬う」という考えが浸透しています。それは日本の神道や仏教の教えに通じるものです。

私たちは、日本人としての誇りを持ち、真の国際人としてもっと世界で活躍ができるはずです。

国内外でのエコツーリズム推進活動や、ガイド養成、国際環境教育活動を通じ、世界で活躍できる日本の若者を育てること、それも私たちエコロジックがなすべきことであると考えます。

interpritation5,インタープリテーション

私にとって「エコツーリズム」との出会いは大学院での研究テーマからでしたが、やはり理論と実際に観光客と関わるツアーの現場は全く異なりました。

「環境の大切さをどう伝えたらいいのか?」

ほとんどの観光客の方々は、遊びに来られているのであって、学校の授業を聞きに来ているわけではありません。ましてやハワイでお説教なんか聞きたいはずがありません。そのため、日々どうすればツアーに参加してくださった方々に、楽しみながらその地の環境や文化の大切さに気付いてもらえるのか、その答えを模索する試行錯誤の毎日でした。

ある時、ハワイのエコツアー会社の社長が私に、「インタープリテーション(Interpretation)」というガイドの手法を紹介してくださいました。これは50年以上前、米国の国立公園を訪問するビジターに環境の大切さを効果的に伝えるための、心理学をベースにした手法でした。

まさに、目から鱗。

参加してくださった方に、楽しんでもらいながらも、メッセージを伝えるにはどうしたらいいのか。私の求めていた答えが、すべての答えがそこにありました。

現在私は、米国を拠点に世界中でインタープリテーションのトレーニングを行っている「National Association for Interpretation」認定トレーナーとして、その技術を世界の人たちに広める仕事もしています。

activity6,「一般社団法人エコロジック」の設立

2008年1月、私はそれまでの経験をもとに独立し、個人事業「エコロジック」として国際協力機構(JICA)の専門家や、海外や国内での研修指導など、様々なエコツーリズム支援活動を続けてきました。

その間に世界の専門家とともに私が制作した教材「Interpretive Methods for Community Based Ecotourism」は現在、JICAの研修指導書に採用され、10か国語以上の言語に翻訳されています。そして、これまでに世界約50カ国以上の人々に活用され、私たちが指導した生徒たちは、この教材を用いて、地域の人たちに技術を広めています。

一般社団法人エコロジック

インタープリテーション - JICA

「Interpretive Methods for Community Based Ecotourism」
(地域が主体となるエコツーリズムにおけるインタープリテーション技術)

そして2013年6月、同じ志を持つ仲間たちの支援を得て、「エコツーリズムを通じて、世界の多様な自然環境、地域文化、地域の人々の尊厳を守る」を使命として、「一般社団法人エコロジック」を立ち上げました。

私たちは、日本国内や世界で培ってきたエコツーリズムやインタープリテーションのノウハウをさらに世界に広げ、次世代のために、よりよい世界環境の構築を目指してまいります。

21世紀の地球環境保護のため、私たちの展開する活動に少しでも多くのご賛同を得られましたら幸いです。

masashintani

一般社団法人エコロジック
代表理事  新谷 雅徳