百聞は一見に如かず:ヨーロッパの秘境アルバニア 2022年2月8日

今まで多くの国で仕事をさせて頂いたが、本格的にヨーロッパで仕事をするのは、今回のアルバニアが初めてとなる。一度、世界銀行の仕事でスコットランドのインタープリテーション会議に出席させてもらったが、それもほんの数日のこと。私にとってヨーロッパといえば、むしろ地元富士宮で行っているエコツアーに参加してくださるお客様としての関りでしかなかった。
正直に言うと、アルバニアでの仕事の依頼があったとき、「アルバニア?アルメニア?ナルニア?ヘルニア?」。。。。「どこ?」という状況だった。NETで調べると、国旗が怖い、ねずみ講、得体が知れない、というようなネガティブなイメージが先に出てくる。世界史でアルバニアを知ってる人がいても、バルカン半島に位置し、社会主義国家や鎖国した国、ユーロッパ最貧国などネガティブなイメージをやはり持たれている。実際に現地で観光に来ているドイツ人の人たちに聞いても、「ヨーロッパの中で、最も相手にされていない国」と言われた。
今回の私の活動は、ディビアカ国立公園やその周辺で観光を行う業者や専門家(ホテル業なども含む)に対しての、エコツーリズムビジネス研修の実施。そのため、現地だけでなく、様々な観光を行っている他の地域への視察もしっかりとさせて頂いた。
今回一番驚いたことは、この国の歴史はすごい!普通に3000年以上前の人々の暮らしを肌で感じられる遺跡がたくさんあり、そこに人々の暮らしが今の残っているということ。長い間鎖国をしていて、他国からの影響を受けていないため、今でもしっかりと文化が残っているということ。あるアルバニア人は、「海に囲まれて他からの影響をあまり受けず独自の文化を守り続けてきた日本と同じで、私たちは鎖国を続けてきたことで未だに昔ながらの文化が残っているんだよね」と語ってくれた。実際、今、他のヨーロッパ諸国からは、古き良きヨーロッパの牧歌性がいまだに残り、様々な文化が入り混じった魅力的な観光デスティネーションとして、人気が上がってきているという。
しかしながら、近年、多くのアルバニア人の若者はドイツに出稼ぎに行き、村の人口が激減している。今回出会った旅行会社の仲間たちは、アルバニアのエコツーリズム観光を推進する事で、若者を戻し、アルバニアの文化を守ろうとしている。実際、ドイツで低賃金労働者として働くより、アルバニアでガイドとして関わる方が、もっと稼げるという。残念ながら、多くの観光地が、グローバル化の波に押され、無計画に開発されてきている。歴史遺産の古城の横には30階建てのマンションが建設され、首都のティラナでは、歴史ある古民家が高層ビルに代わり続けている。
「なくなってしまったら、戻らない」、古民家で暮らし続ける元サーカス団の老夫婦の言葉が心に響く。アルバニアは、ちょっと来ただけの自分では決して理解することができない歴史的、政治的な国家的、地域的な問題を抱えていることが彼らの話から感じられる。ただ、出会ったすべての人たちは愛に溢れ、アルバニアを愛し、ポジティブに暮らしている。
ありがたいことに、実際の研修は現地の専門家の人たちに高く評価された。「アルバニアでは、イタリアなどヨーロッパや米国の支援があり、たくさんの観光研修を今まで実施してきた。ただ、コンサルタントという人たちがたくさん来たけど、教科書通りの話ばかりで、ほとんど寝ていた。新谷さんの話は、すべてが現場の経験に基づいており、しかもそれをロジカルに説明してくれる。初めて寝なかったよ。加えて、自然保護と文化と地域住民をつなげて行うエコツアーは素晴らしい。これから、頑張ってやっていくよ。」と。なかなか一筋縄ではいかない国だけど、みんなで頑張ってほしい。
〈JICAディヴィアカ・カラヴァスタ国立公園における生態系に基づく管理に係る能力開発プロジェクト(The Project for Capacity Building for Improving Ecosystem-Based Management on Divjake-Karvasta National Park)2022年1月17日~2月7日〉